ヘルツォーク&ド・ムーロン (H&dM)の建築作品10選!これだけは知っておきたい!

ヘルツォーク&ド・ムーロン

今回は、国際的な建築ユニットでありながら進化しつづける「ヘルツォーク&ド・ムーロン (H&dM)」をご紹介します。

日本では、昨年オープンしたばかりの「銀座ユニクロ・トウキョウ」、表参道のシンボル的存在でありながら対照的な存在感を放つ「プラダ青山店とミュウミュウ青山店」で、すでにご存知の方も多いかもしれません。

コンクリート構造むきだしのダイナミックな吹き抜けが印象的なユニクロ、エレガントな格子ガラスが極上の開放感を演出するプラダ、隠れ家のように控えめながら特別感を感じさせるミュウミュウ…。

H&dMは素材を活かしたアーティスティックな建築表層の作品で知られていますが、どれも作風が異なるので、とても同じユニットが作り上げたとは思えませんよね?

その変幻自在さに敬意を込めて「建築界のデビッド・ボウイ」と呼ばせていただきたいほど、です。

個人住居など小さなものから美術館やスタジアムの巨大プロジェクトまで、世界各国にある膨大な作品のなかから、建築ウォッチャー目線で「これを知ると、もっと知りたくなる」ような作品を選んでみました。



ヘルツォーク&ド・ムーロン って?

 

”ヘルツォーク&ド・ムーロン(仏: Herzog & de Meuron、略称HdM)は、スイスのバーゼル出身のジャック・ヘルツォーク[1]とピエール・ド・ムーロン[2]の2人による建築家ユニット[3]。この2人は、スイス連邦工科大学チューリヒ校で共に建築を学び、卒業後の1978年から共同の建築設計事務所を開いて共に働いている。2001年にはプリツカー賞を、2007年には世界文化賞建築部門を受賞。”

出典wiki

 

「作品を雄弁に表現するのは、元アーティスト志望のヘルツォーク。それを寡黙に専門知識をたずさえて支えるのが、元エンジニア志望のド・ムーロン」と、まったく違うキャラで知られるふたり。決して役割分担ではなく、お互いを補完する最強タッグという関係です。それは、就学前からという友人歴60年以上、仕事の相棒歴40年以上という幼馴染ユニットによる「阿吽の呼吸」があるからこそ。

 

ヘルツォーク&ド・ムーロンの特徴って?

固定したスタイルやイデオロギーを持たないことを信条しており、定番といえる外観の代わりに、プロジェクトごとに異なるポテンシャル(細部、素材、質感)を引き出すのが彼ららしさ。

大雑把に言ってしまえば、”特徴がないのが特徴であり、どれもが独自のスタイル”。

その背景には、多文化・多言語国家であるスイス出身というのもあるようです。テート・モダンの大成功による2000年あたりから、デザインとしての表層と構造を一体化することでも知られるようになり、ますます多様化に拍車がかかっているように思えます。

また、プロジェクトごとに話題の’アーティストと形態を変えてコラボすることで、斬新さをアップグレードしていくことでも知られてますよ。

 

ヘルツォーク&ド・ムーロン10選

それでは、早速行ってみましょう。

 

シグナル・ボックス/Signal Box (1999年)

引用:Herzog & de Meuron

スイス、バーゼルにあるスイス鉄道の信号所(駅構内の信号やポイントの切り替え用施設)。

H&dMの名が世の中に知られるようになった初期代表作です。

外壁の仕上げ材として帯状に巻かれた銅板のねじれが特徴の建物は、角度や天候などによって多彩な表情を見せてくれます。この銅板にはデザインとしてだけでなく、内部の電子機器をコントロールする役割も。

 

引用:ArchDaily

現代アーティストのドナルド・ジャッドの作品を彷彿させるように、ひとつの素材だけを主要なモチーフにしており、ミニマムでシンプルな美しさが際立ってます。

実はシグナルボックスは2棟あり、外壁の素材は同じでも”ねじれ”のない片方(1994年)と比較してみると、まるで「メスとオス?」と思えるほど印象が違うのが面白いですよ。

 

北京国立競技場 Beijing National Stadium( 2008年)

引用:National Geographic Society

そのドラマティックな形状とスケール感から、覚えている方も多いのではないでしょうか?ド派手なライトアップもインパクト大でしたよね。

北京オリンピックのメイン会場として建設された、幅320メートル、高さ69メートルの超巨大なスタジアムです。ランダムに交錯する独特な鉄骨フレームの構造体(幾何学による複雑なルールによって設計)で覆われた外観から、通称「鳥の巣」とも。10年以上経った現在も、「有名建築家たちによる歴代オリンピックスタジアムのなかで最も衝撃的であり、かつ美しい建築」と称されてます。この作品は、中国でもっとも影響力をもつ現代美術家、アイ・ウェイウェイとのコラボとしても有名。

2022年予定の北京冬季オリンピックの会場にもなるのだとか。

 

テート・モダン TATE MODERN(本館2000年/新館2016年)

引用:ArchDaily

ロンドンのサウスバンク地区にある、廃墟同然の元発電所を改装した国立現代美術館。

ノーマン・フォスターによるミレニアム・ブリッジに隣接しています。

元の構造や歴史的な存在感を損なうことなく、ガラスなどの新素材を加えることで現代建築へと昇華させた傑作。H&dMを世界的な建築家へと一気に躍進させた出世作です。

発電所の名残である高さ99メートルの煙突をそのまま再利用した威圧的で重厚なレンガ造りの外観は、まったく美術館には見えないところが非常にユニークです。

引用:Inexhibit

もっとも印象的なのは、タービンホールと呼ばれるダイナミックなエントランス。

元々は大型発電機が置かれていたという5層吹き抜けの広大なスペース(約3,400平方メートルの面積、高さ7階分)は、そのスケール感に圧倒されるはず。

最上部にはガラスボックスが取り付けられており、自然光を取り込んでいるため居心地も抜群です。

引用:The Architect’s Newspaper

エントランスを挟んで南側に増設されたのが、新館「スイッチハウス」(本館は「ボイラーハウス」)。レンガ造りにスリット状のガラスが入ったピラミッドのような外観が迫力満点ですよ。

エルプフィルハーモニー・ハンブルク/ Elbphilharmonie Hamburg (2017年)

引用:Wallpaper

ドイツ、ハンブルグの湾岸地区にある、コンサートホール、ホテルなどからなる複合施設。

王冠をかぶっているような建物は、古倉庫に新たにガラスの建築構造を加えたもの。

1,100枚の曲面ガラスを使用した現代的な外壁と伝統的な赤いレンガ造りの外観を組合わせた、新旧のコントラストが印象的です。

曲面ガラスは、空、外光、水を動的に反射させるために使用されているのだとか。

引用:Archinect

また、手彫りで凹凸をつけたという約1万枚もの石膏ボードを使った洞窟のようなコンサートホールは、著名指揮者たちも絶賛する音響空間ですので、音楽ファンにも見逃せません。

新旧建築の隙間のような空間は、360度街が見渡せる無料展望台になってるので誰でも利用可。

地上から展望台へと続く、「宇宙船の中!?」のような趣向のエスカレーターもユニークですよ。

 

1111 リンカーンロード / 1111 LINCOLN ROAD (2010年)

引用:Archute

アメリカ、マイアミの駐車場+複合施設(300台分の駐車場をメインに、店舗や住居も入った多目的スペース)。

批評家たちから「世界で一番美しい駐車場」と言われてます。このコンクリート構造の建物は、駐車場とは思えないほどスタイリッシュなデザインが特徴的。

階層によって高さも異なり、壁も極限まで取り払われ、柱は台形型、機能性を重視するはずの階段さえも広く鋭角的にと、独創的な建築ディティールがあちこちに見られます。

その美しすぎる佇まいから、アートイベントショーやファッション撮影に使用されたり、”歩いて”「駐車場詣で」に訪れる観光客も後をたたないのだとか。一見の価値あり、です。

 

56 レオナード /56 LEONARD (2017年)

引用:ArchDaily

ニューヨークのトライベッカ地区にある、集合住宅型のガラス張り超高層ビル(60階建て高さ約250メートル)。

積み重なった階層が側面から不規則にボコボコと突き出る特徴的なシルエットから、「ジェンガビル」と呼ばれています。

この各階のズレでできるスペースは、部屋ごとの屋外テラスへと活用されているのだとか。

また、エントランスにも注目を。この外部構造と一体化した「巨大な金属製のマメ?」のようなモニュメントは、有名彫刻家アニッシュ・カプーアによる世界初のパブリックアートです。

実は予算削減のためデザイン変更があったそうなのですが、より複雑で奇抜だったというオリジナルプランで見てみたかった気もしませんか?

 

ヴィトラハウス Vitrahaus (2010年)

 

引用:Architecture Lab

ドイツ、ヴィトラキャンパス内にあるショールーム。

積み木を無造作に重ねたような建物は、12棟の切妻家屋を多方向に5層に重ねた複雑な構成となっており、実際に何階建てなのか検討もつかないユニークな外観。

重ねられた5角形の各家屋は切口部分は全面ガラスになっており、場所によって微妙に違います。

外側からみた積み重ねという構造は、その複雑さを内部空間でうまく利用しているのも印象的です。

階ごとにコンセプトが違うので(壁、天井、床すべて)、色んな場所を訪れているような気になるのですが、導線に独特な階段を使ったりして、それぞれの空間を見事につなげています。

内観を終えて外観を見上げると、「ちゃんとひとつの建築物なんだ」と不思議な感覚になるかも。

ちなみに、ガラスの開口口から自然光が入る昼、そしてライトアップされた5角形の光が浮かびあがる夜はまったく表情が変わるので、こちらも要チェックです。

ドミナス・ワイナリー/Dominus Winery(1997年)

引用:Dezeen

カリフォルニア州ナパバレーにあるワイナリー。

H&dMのアメリカ初のプロジェクトです。

引用:Paris Design Agenda

近隣で出土された石をワイヤーメッシュのカゴの中に詰め込んだ透過性のある外壁が最大の特徴。

仕切りとしての役割だけではなく、詰め込まれた石が日差しを遮りつつも風を通し、湿度や気温を快適にコントロールするため、暑いカリフォルニアでもエアコンいらずなのだとか。

まさに、「呼吸する壁」です。

内部には、石の隙間から絶妙に光が差し込むガラスボックスのテイスティングルームがあり、広大なぶどう畑が一望できます。現在、残念ながら一般公開されてないので、この動画(https://www.youtube.com/watch?v=Gk4F3YC4F7U)で行った気分だけでも味わってみてくださいね。

動画出典: JAMESSUCKLING.COM

 

トリニティ・ラバン・ダンスセンター/ TRINITY LABAN DANCE CENTRE (2003年)

SCANNERMAKER: AGFA
SCANNER: DUOSCAN T1200
SOFTWARE: BW-TIFF Version 2.46
esta imagen corresponde con la que aparece impresa en la revista ViA arquitectura en su artículo específico

引用:WikiArquitectura

ロンドンにある、ヨーロッパ最大のコンテポラリーダンスの学校。

この建物は、ダブルスキン構造(色のグラデュエーションが入った半透明なポリカーボネートパネルとガラス)の曲面ファサードが特徴的です。

日差しや反射を遮る効果やプライバシーの確保という役割だけではなく、光の差し込み具合で次々と色が変化し、多彩な表情を見せてくれます。

引用:Flickr

ポリカーボネート製の鏡がはめこまれた窓では、映りこむ風景を取り込んで幻想的なイメージとなるようにも演出。この色調と素材の組み合わせは、視覚的な錯覚を綿密に計算したものなのだとか。

ダンサーたちのシルエットとともに、日中は淡い色と柔らかな光の拡散がメルヘンチックで、夜にはカラフルな光の灯台のようで官能的に綺麗ですよ。

 

パリッシュ美術館/ Parrish Art Museum (2012年)

引用:a+t architecture publishers

マンハッタンから車で約3時間ほどの、避暑地として人気のハンプトン(ニューヨーク州ロングアイランド)にあります。この風光明媚なエリアは古くから芸術家たちが集うことでも知られており、彼らがアトリエとした「納屋(馬小屋)」が作品のモチーフとなります。

コンクリート打ちっぱなしの外壁に奥行き約188メートルという、かなり細長い切妻屋根の平屋が2棟並ぶだけというデザインは、一見すると地味と感じるかもしれません。

しかし、シンプルすぎるデザインだからこそ、周囲の牧草地のような広大な景観に見事に溶け込んでおり、そのひっそりとした佇まいに感動さえ覚えるはず。

引用:Arch2O

古き良き時代のアトリエをありのまま再現したという内部空間も天窓や壁のスリットから絶妙に自然光が入るようになっているので、時間を忘れて過ごしたくなるような居心地の良さがあります。

ご当地特有の自然美(光、空、水)や空気感を巧みに建築へと取り込んだ秀作です!

これからのヘルツォーク&ド・ムーロン (H&dM)

地元バーゼルに完成したばかりの最新ホテル(Volkshaus Basel)、今年末の正式公開が決定した香港の現代美術館(M+)から現在進行中の数多なプロジェクトまで、まだまだ目が離せないものばかりですので、自分のお気に入りを是非探してみてくださいね。

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