こんにちは。
まると建築デザインブログのとくまるです。
今回は、数年前に旋風を巻き起こした展示会によってマニアだけでなく、一般的にも知られるようになった世界的に有名な建築家、フランク・ゲーリーをご紹介します。近代建築三大巨匠のひとりと呼ばれ、「生きるリジェンド」「建築界の革命児」とまで言われるお方。92歳、現役バリバリです。
世界中の観光名所、ランドーマーク的な建築を数多く手がけており、名前までは知らなくても、その強烈にインパクトのある作品はどこかしらで目にしたことがあるはず。建築ウォッチャーの目線で、初心者の方でもこれだけは知っておくとちょっと楽しくなるような作品を選んでみました。
- フランク・ゲーリーって何者?
- どんな特徴があるの?
- フランクゲーリーの建築12選
- 1, グッゲンハイム美術館ビルバオ/ Guggenheim Museum Bilbao (1997年)
- ゲーリー自邸/ Gehry Residence (1978年)
- ウォルト・ディズニー・コンサートホール/ Walt Disney Concert Hall (2003年)
- ヴィトラ・デザイン・ミュージアム/ Vitra Design Museum (1989年)
- ダンシング・ハウス/ Dancing House ( 1996年)
- フォンダシオン・ルイ・ヴィトン /ルイヴィトン財団美術館/Fondation Louis Vuitton(2014年)
- MITレイ&マリア・スタータ・センター/MIT Ray & Maria Stata Center (2004年)
- ワイズマン・ミュージアム/Weisman Art Museum (1993年)
- マルケス・デ・リスカル/ Marques de Riscal (2006年)
- ニューヨーク・バイ・ゲーリー/New York by Gehry (2010年)
- リュマ・タワー/ LUMA tower (2021年)
フランク・ゲーリーって何者?
”フランク・オーウェン・ゲーリー(Frank Owen Gehry、1929年2月28日 – ) は、アメリカ合衆国のロサンゼルスを本拠地とする、カナダ・トロント出身の建築家。現在、コロンビア大学建築大学院教授。イェール大学でも教鞭を執っている。”
出典: wikipedia
世界でもっとも影響力のある建築家と呼ばれてます(SANNAの西島立衛氏など、錚々たるメンツが公言してますよね)。ロスを拠点に活動しているため、とくに米国内では都会から地方の村まで、その作品数は膨大です。アニメ「シンプソン」に登場するほどの国民的建築家として知られる一方、公式会見で中指を立てたりするお騒がせ(ファンキー!?)な一面も。
どんな特徴があるの?
「脱構築主義」と専門家なら言うかもですが、要は誰が見ても一発で分かるような奇抜な造形で有名です。「常識に囚われない斬新なアイディアによる構造手法、そして過激で大胆なデザイン」が最大の魅力と言えます。
金属、レンガ、石膏など、これまで使われなかったビックリな素材で仕上げられた建築は、どんな着想から生まれ、カタチになっていったのか想像力をかきたてられるものばかり。一般公開されるたびに、人だけではなく街や国まで巻き込むほどの大きな物議となり、良い意味でも悪い意味でも世の中を驚かせ続けています。
フランクゲーリーの建築12選
それでは、早速見ていきましょう。
1, グッゲンハイム美術館ビルバオ/ Guggenheim Museum Bilbao (1997年)
スペインのバスク自治州ビルバオ市にある、コンテンポラリーアート専門の美術館です。各国に精力的に美術館事業を展開しているグッゲンハイム財団の世界戦略のひとつとして1997年にオープンしました。過激で有機的なフォルムがひときわ目を引く建物は、建築界の巨匠フランク・O・ゲーリーによって設計されたもので、今やビルバオの顔として存在感を放っています。
この作品でゲーリーを知った人がほとんどではないでしょうか?
建築が街そのものを作り変えた、といわれる代表作、出世作。銀色ファサードが異彩を放つ建築を田舎町の風景にすんなり溶け込ませ、見事に調和させています。奇抜なデザインばかり注目されがちでしたが、ゲーリーの真骨頂である内観や景観への繊細なアプローチという軽視されてきた才能が再評価され、その後の大ブレークとなるキッカケになりました。歪みの曲線美は内外に冴えわたり、ダイナミックなのに居心地良く空間構成された内観はホントに必見です。20年以上経った今も「現代建築の傑作」のひとつと言われるのも納得の衝撃度ですよ。
ゲーリー自邸/ Gehry Residence (1978年)
ロスのサンタモニカにある旧自宅です。築60年ほどの古民家(バンガロー)を自身で大胆にリノベすることで、普通の建築家だった彼が世の注目を浴びることになった原点ともいえる場所です。新旧融合のスタイル、合板や金網などの安い材料を使った”遊び心”満載な増改築は、「まだ工事中?」にしか見えない外観だけみれば美しいだけのものではないかもしれませんが、インスピレーションをカタチにするという実験的な手法はココから始まりました。数年前まで、ホントに住んで改築しまくってたそうですよ(現在は、息子さんが建てた新居へ転居)。
ウォルト・ディズニー・コンサートホール/ Walt Disney Concert Hall (2003年)
“ウォルト・ディズニー・コンサートホール(Walt Disney Concert Hall)は、ロサンゼルス・ミュージックセンター内にある、ヴィンヤード型のコンサートホール。
設計はフランク・ゲーリー、音響は豊田泰久が担当した。
メインホールは、硬質木製パネルで構成され、優れた音響効果を持つ。”
出典: wikipedia
波打つステンレスパネルのファサードは、ロスという都会環境に合わせ光りすぎないマット加工になっており、昼はカリフォルニアの強い日差しを反射し、夜はライトアップされて違う表情を見せてくれます。また、内部もコンサートホールという閉じた空間なのに曲線をうまく利用して西海岸らしい開放感を演出し、プロとタッグを組むことで音響効果まで最大限に活かせるように計算されています。無料ガイドツアーもあるのでお見逃しなく。
ちなみに、すぐお隣には現代アートをこれでもかとコレクションしているプライベートミュージアム「The Broad」(無料)もあるので、建築巡礼をされたい方には最高のロケーションです。こちらは、ニューヨークのハイラインをデザインしたディラー・スコフィディオ+レンフロ & ゲンスラーの建築です。
ヴィトラ・デザイン・ミュージアム/ Vitra Design Museum (1989年)
“ヴィトラデザインミュージアムの建物は、円錐状の形や傾斜路、立方体のコラージュによるフランク・ゲーリー建築の象徴的なデザインです。その表現豊かなフォルムは決して無秩序なものではなく、必要な機能によるものです。展示スペースは1、2階併せ約700平方メートルの広さがあり、大きな窓から光が明るく差し込みます。”
出典: Vitra
ゲーリー初のヨーロッパ・プロジェクトは、ドイツのバーデンにあります。外観は白石膏とチタンという限られた素材で仕上げられ、とぐろを巻いたような階段が印象的な小さな美術館です。絶妙に入る自然光、エントランスからほとんどの展示室が緩やかにつながる内観も秀逸。ビルバオなどの派手な作品と比べると地味に感じるかもしれませんが、内外ともに白で統一されているので違う感覚を味わえるかもしれません。今でこそ曲線や斜線の多用はゲーリーを象徴する個性なってますが、この作品が「彼の曲線の美学」への始まりだそうですよ。
ダンシング・ハウス/ Dancing House ( 1996年)
“ダンシング・ハウス(Dancing House、踊る家、チェコ語: Tančící dům)は、1996年にプラハに建てられたビルである。
ジンジャー&フレッドとも(1930年代のミュージカル映画の有名なダンサー、ジンジャー・ロジャースとフレッド・アステアのコンビにちなむ)。
正式名称はナショナーレ・ネーデルランデン・ビル。
冷戦終結後、チェコが民主化、スロヴァキアとの分裂を経て、ヴァーツラフ・ハヴェルが大統領の時代に建てられた。”
出典: wikipedia
ガラス、スチール、コンクリートパネルで構成された複合型商業施設です。異なる素材と形状の2塔が絡み合うスタイルが非常にユニークです。ちなみに、右側の曲がりくねったガラス張りの塔が女性を表しているんだとか。プラハは、バロック、ゴシック、アールヌーボーなどの歴史的建築様式が数多く現存する土地柄ということもあり、街唯一のポストモダン建築として一際異彩を放っています。施設内はカフェやホテルになっているので内観も可能。
フォンダシオン・ルイ・ヴィトン /ルイヴィトン財団美術館/Fondation Louis Vuitton(2014年)
パリ西部、ブローニュの森の中にある美術館。ルイ・ヴィトン財団が所有する作品やグループCEOのベルナール・アルノー氏のコレクションなど、さまざまなジャンルのアート作品を展示しています。アメリカの建築家フランク・ゲーリー氏設計によるこの美術館は、19世紀フランス特有の鉄骨とガラスの建築から着想を得つつ、林と庭園に囲まれた自然環境に溶け込み、光と鏡の反射に浮かび上がるヨットや船のイメージをかたちにしたものです。ギャラリースペースは11の部屋から成り、内部にはコンサートやイベントが開催されるホールも併設されています。
出典:世界の美術館データベース
ほとんどの代表作で使用されたアイコン的素材(金属)ではなく、曲線状のガラス(3600枚)を外壁に使っていることが、この作品の最大の特徴です。しかも、ガラスはゲーリーの思い描く難度の高い曲線や躍動感を表現するために特注されたもの。これまでの金属による彫刻的な閉鎖性がなくなることで軽やかな開放感につながっており、その美しさに圧倒されます。
MITレイ&マリア・スタータ・センター/MIT Ray & Maria Stata Center (2004年)
米国マサチューセッツ州ケンブリッジにある、マサチューセッツ工科大学 (MIT)キャンパス内にある学術施設。分棟型のタワー(ガラス、レンガ、ステンレスなど異なる外壁素材、そして様々なフォルムの独立した小塔)が内部でつながり、ひとつの建物を構成しています。
キャンパス内の数あるスター建築家たちの作品(IMペイやサーリンネンなど)のなかでも飛び抜けてユニークな存在です。複雑で自由奔放すぎる構造は、積み木をひっくり返したようで常識破りなゲーリーらしい作品と言えます。どの角度から見ても違う顔をのぞかせるので、建物周辺をぐるりと回ってみるのがオススメ。異なる塔が集まってできた内部空間はさらに複雑で迷子になってしまうほどで、構造上できてしまった隙間に色々な仕掛けが施してあり、不思議な感覚に陥ることでしょう。
ワイズマン・ミュージアム/Weisman Art Museum (1993年)
米国ミネソタ州ミネアポリスにある、ミネソタ大学のキャンパス内にある美術館です。
正面エントランスと建物の一面のみにステンレスパネル(ステンレス製のキュービズム風の形状は、魚が滝を飛び上がる様子を抽象的に表現したもの)で仕上げられた作品は、ゲーリーとしてはかなり遠慮がちなデザインに見えます。というのも、これは本格的にハイテクな構築技術を取り入れる前のもので、現在の大胆な曲線フォルムへの反応を試す実験的な施策であったようなのです。そのため、「ベイビー・ビルバオ」とも呼ばれることも。2011年、再びゲーリーの設計により増築されました。
マルケス・デ・リスカル/ Marques de Riscal (2006年)
スペイン、エルシエゴにある高級リゾートホテルです。ワイナリーからの依頼により、ゲーリーが初めて手掛けたホテル建築になります。緑豊かな田舎町にあるワイナリーに隣接した、ひときわ目立つ存在。シルバーのスチールとチタン製のスイープリボンは、ワインを反映した濃い紫色の色調で構成されています。夜のライトアップでは浮かび上がるように溶け込んで一枚の絵のようです。ビルバオから車で約1時間半ほどなので、是非立ち寄ってみてはいかがでしょう?
ニューヨーク・バイ・ゲーリー/New York by Gehry (2010年)
ニューヨークのロウアーマンハッタンにある、76階建て(高さ265メートル)の高層マンションです。彼のアイコン建築である、ゆるやかな曲線を配したステンレスパネルの外観は、角度や時間帯によって違った顔を見せてくれる美しい仕上がりとなっています。
高層ビルとしては珍しく集合住宅用だからでしょうか、他の代表作と比べては曲線のうねりが控えめです。
インテリアや共有スペースなどのデザインもゲーリーが担当してます。
リュマ・タワー/ LUMA tower (2021年)
フランス・アルルにある、リュマ・アルルという文化複合施設内に今年6月26日に公式オープンする最新作です。この多面体の塔(高さ56メートル)は、11,000ものステンレスパネルが不規則に配されたファサードに突き出たガラス窓がユニークです。
番外編/「トンデモ建築!?」な3選
そもそも代表作であるビルバオも「珍建築」として有名ですが、ビルバオの成功で建築家/芸術家として世界的な名声を確固とするまでの80年代中盤〜90年代初期(レム・コールハースなどが台頭してきた頃)はゲーリーにとって不遇の時代とも言われてます。
数々の著名な受賞歴があろうとも、「変なモノを作るオジサン」「個性的すぎる建築家」…のような、キワモノ扱いとしてしか、一般的には受け入れてもらえなかった時代があったわけです。
巨匠ゲーリーという面だけではなく、人間くさい面も垣間見ることができる当時の作品は、だからなかなかに面白いのです。
どれほど振り幅のあるユニークなアーティストであるかを知るためにも、その頃のトンデモ作品も少しだけご紹介しておきます。
フライング・フィッシュ / Flying Fish (1992年)
スペイン名「El Peix」、英名「Gold Fish」とも言われてます。スペインのバルセロナにある、オリンピックを記念のモニュメントです。魚のモチーフが好きなゲーリーらしい巨大彫刻は、全長52メートル。
フィッシュ・ダンス/ Fish Dance (1987年)
”フィッシュ・ダンスは、神戸港のメリケンパークに建つ高さ22mの巨大な鯉のオブジェ。1987年(昭和62年)に神戸開港120年を記念して設置された。世界的建築家フランク・ゲーリーが設計を、同じく安藤忠雄が監修を担当した芸術作品である。”
出典: wikipedia
こちらは、神戸港にあるので、比較的に見に行きやすいのではないのでしょうか。
夜にはライトアップされてキレイだそうですので、観光などで立ち寄った際には見に行ってみて下さい。
双眼鏡ビル/Binoculars Building (1991年)
アメリカ、カリフォルニアのベニスにあるオフィスビルです。元々は広告代理店の事務所として建てられ、その入り口を覆う巨大彫刻から「双眼鏡ビル」と呼ばれように。
どうです?どれもゲーリー節が炸裂してると思いませんか?
そうそう、ドキュメンタリー映画『スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー』(2005年。長年の友人であるシドニー・ポラック監督作品)も面白いので、機会があれば鑑賞してみてくださいね。
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